あ!由香だ!僕は全力で走るとスマホを掴みタッチする。
「バカァァァァァ!いつになったら来るのよぉぉぉぉぉ!ずっと待ってるのにぃぃぃぃぃ!」泣き声で絶叫する由香。
「わかった!すぐ行く!」
叫ぶと後も見ずに駆け出す。待っててくれたんだ、待っててくれたんだ、と心がぐわんぐわん踊る。一刻も早く由香の元へ。エレベーターに乗らず階段を駆け降りる。
その時思い出す。しまった!笹部みはるのJOYのハモリ練習してない!
道路に飛び出し走りながらYouTubeで検索する。動画を探し当てるとカバンからヘッドフォンを引っ張り出し耳に押し込み、ジャックをスマホに突っ込む。再生ボタンをタッチすると音が頭の中に流れ出した。僕は全力で走る。由香の元へ。
女性ボーカルの優しい声が囁くように響き出す。
この広い宇宙の片隅で~♪
出会えたこの奇跡~♪
たった一人のあなたに巡り合えた喜び~♪
JOY~私は歌う~♪
あなたがいてくれる喜びを~♪
生まれて来た日も場所も違う二人だけど~♪
この世界が終わる時が来ても~♪
きっと二人は一緒だね~♪
魂を揺さぶられるような衝撃が身体中を貫く。感動で頭の中がぐちゃぐちゃになる。
何だよ、由香、言ってくれなきゃわかんないよ。この歌を一緒に歌いたいって言ってよ。二人で一緒にこの歌を歌いながら死にたいって言ってくれなきゃわかんないじゃないか!
ばかだな、由香。ホントにばかだ。そう言ってくれたらさ、桑田課長なんて絶対すっ飛ばして、由香のところへ行ったのにさ。
由香のまっすぐな想いが胸に突き刺さり、僕の胸はめちゃめちゃ熱くなる。
由香のまっすぐな想いが胸に突き刺さり、僕の胸はめちゃめちゃ熱くなる。
僕はぼろぼろ泣きながら中央通りを走る。永代通りを右に曲がり走る走る走る。
待っててくれよ、由香。ホモサピエンス40万年の誇りを賭けて歌うからさ。
二本目の角を左に曲がったら赤い派手な「コーラス」の電飾が光っていた。
よし!もうすぐだ!
※小説主題歌「地球最期の日」はこちら(音声のみです)
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